Adam Lunn working with Pro Tools

Pro Tools 2023.3ソフトウェア・アップデートは、Appleシリコン・プロセッサー上でPro Toolsをネイティブで実行するための公式サポート、エラスティック・オーディオ処理オプションの増加、スクリプトSDK のアップデート、オートメーション・ブレークポイントへのタブ機能、編集グループにルーラーを含めるなど、多数のワークフローの改善を提供します。 

このリリースでは、有効なサブスクリプション、またはソフトウェア・アップデート+サポート・プランに加入している永続版ライセンスをお持ちのPro Toolsユーザー向けに、新しいサウンド・コンテンツとインストゥルメントも導入されています。なお、2023.3アップデートはすべてのPro Tools Introユーザーも利用可能ですが、以下の新しいコンテンツとインストゥルメントはご利用いただけません。

  • Pro Tools | Sonic Drop—マルチプラチナ・アーティストでAvidサウンド・デザイナーのマット・ラングが監修する、新しいサンプル、ループ、インストゥルメント・プリセットを毎月お届けするプログラムです
  • Pro Tools | PlayCell は、包括的なサウンド・コレクションと、完璧なサウンドを簡単に見つけて選択できる合理的なインターフェースを含む、新しいサンプル・プレイバック・インストゥルメントです
  • Pro Tools | GrooveCell および SynthCellのアップデート—17の新しいGrooveCellキットと30の新しいSynthCellプリセットを含むバーチャル・インストゥルメントがアップデートされ、多様なサウンドとテクスチャーを提供します

 

Appleシリコンのサポート

2022年末、Appleシリコン・ネイティブをサポートするパブリック・ベータ版をリリースしました。これにより、ユーザーはパフォーマンスの利点をいくつか試すことができ、またプラグイン開発者はApple シリコン・ネイティブのサポートに先手を打つことができました。リリースを早くするため、一部のネイティブ機能は含まれていませんでしたが、Pro Tools 2022.3では予定されていた機能を復元し、さらにそれ以上のものも含まれていることを嬉しく思います。 

Pro Tools 2022.12で導入されたApple シリコン・ネイティブのパブリック・ベータ版は、完全認証されておらず、AIRプラグインとインストゥルメント(Structure Freeを除く)、Cloud コラボレーションとプロジェクトのサポート、エラスティック・オーディオでのX-Form Audio Suiteとアルゴリズム、MP3 エクスポート、スコアエディタ、コード抽出などの主要機能が欠けていました。Pro Tools 2023.3は、M1およびM2プロセッサでAppleシリコン・ネイティブのサポートを認証し、パブリック・ベータ版で欠けていた上記の機能を復元しています。

Apple M2 and M1 logos

パブリック・ベータ版でお知らせしたように、Appleシリコン上でICON、C24、Command 8コントロール・サーフェスをネイティブで動作させることができません。これらのコントロール・サーフェスは、数年前からサポートが終了し、テストも行っておりませんが、Rosetta 2で実行する場合は、これまで通り動作します。AAC インポートとStructure Freeインストゥルメントのサポートは、現時点では利用できませんが、次のリリースで追加される予定です。

なお、Pro Tools 2022.3は、デフォルトでネイティブ・モードで起動するようになりました。このビデオでは、ネイティブ・モードとRosettaモードを切り替える方法を紹介しています。


(YouTube上の上部タイトルをクリックのうえ、ぜひ拡大してご覧ください!)

 

AIR InstrumentsやFXを含むPro Toolsにバンドルされているすべてのプラグイン(Structure Freeを除く)が、Appleシリコンにネイティブで対応するようになりました。サードパーティー・プラグインの開発者も迅速に対応しています。認証されたサードパーティー・プラグインの一覧リストは、こちらでご覧いただけます。

なぜこれが重要なのでしょうか?簡単に言うと、アプリケーション全体の性能が大幅に向上しているからです。Pro Toolsの応答性が大幅に向上し、アクションが素早くなったことがお分かりいただけると思います。また、プラグインを使用した際のCPU使用率も大幅に向上しています。プラグインによって結果は異なりますが、同じシステムでRosettaと比較して、最大2.5倍も性能が向上するプラグインがあることを確認しています。

以下は、私たちが測定した結果の一部を示した表です。

Pro Tools 機能 % 向上率*
プラグインのCPU性能 最大 +150%
Pro Toolsを起動 +80%
大規模なセッションを開く +25%
トラックを削除、作成、複製 +80%
無効のフォルダから100トラックをドラッグしてトラックを有効にする +67%
有効のフォルダから100トラックをドラッグしてトラックを無効にする +62%
オフライン・バウンス(大規模なセッション – サラウンド&Dolby Atmos) +64%
SSDでのワークスペース・インデックスを作成 +25%
AAFインポート(ソースからコピー) +24%

*Avidのテスト・システムによる性能仕様であり、性能を保証するものではありません。



エラスティック・オーディオのアップデート

Appleのネイティブ・シリコンでX-Formをサポートするだけでなく、全く新しいエラスティック・アルゴリズムである、zplane.developmentのélastique Pro V3をPro Toolsのすべてのバージョンに追加しました。élastiqueは、モノフォニックおよびポリフォニック・オーディオに対してリアルタイムで、安定したタイミング、チャンネル間位相コヒーレンス、サンプル精度のストレッチ、さらにフォルマント保持ピッチ・シフトを行います。

このリリースでは、Melodyne ARAプラグインとのテンポの相互作用も改善されました。 Melodyneはワープマーカーで編集できる直接的なエラスティック・オーディオのプラグインではありませんが、クリップがMelodyne ARAプラグインによって分析されている限り、ティックベース・トラックのテンポ変更に合わせて、同時にオーディオをストレッチすることができます。Pro Tools 2023.3では、ティックベース・トラックに追加されたすべての新しいクリップが自動的に分析されるようになり、すべてのクリップがテンポの変更に合わせて適切にストレッチされるようになりました。

エラスティック・オーディオの新しいビデオで、詳細をご確認ください。


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M4a AACオーディオは、長い間、Appleコンピュータで人気のある圧縮オーディオ・フォーマットでした。このリリースで、Appleのオーディオ・ツールキットを活用して、macOSのみで、Pro Toolsの全てのバージョンでこのフォーマットを書き出せるようになりました。


Pro Tools | PlayCellインストゥルメント

2023.3リリースでは、Pro Toolsユーザーに合理化したインターフェースで多様なサウンドを提供する、新しいサンプル・プレイバック・インストゥルメントとなるPro Tools|PlayCellも導入されました。PlayCellは、インストゥルメントの種類ごとに素早く結果を得られるように最適化されたマクロ・コントロールを共有する「コレクション」によってインストゥルメントを整理し、また、ランダマイザーを使って何かを作ることもできます。そして、これはほんの始まりに過ぎません。新しいコンテンツ・プログラムSonic Dropを通じて、時間をかけてさらに多くのサウンドを追加していく予定です。PlayCellは、Pro Toolsの有効なサブスクリプション(月額および年額)および有効なプランの永続版ライセンスをお持ちであれば、無料で利用できます(Pro Tool Introユーザーは、PlayCellを入手できません)。  

マット・ラングがPro Tools|PlayCellを紹介するビデオをご覧ください。

(YouTube上の上部タイトルをクリックのうえ、ぜひ拡大してご覧ください!)

 

Pro Toolsワークフローの改善点

オートメーション・ブレークポイントへタブ

オートメーションのブレークポイントにタブで移動できるようになりました! この機能が実現されると話すと、「Pro Toolsにすでにある機能では?」と色々な人に言われるのですが、ワークフローが複雑になりすぎるため、実現されなかったのです。例えば、選択範囲には、クリップ、クリップ内のトランジェント、オートメーションのブレークポイントなど、多くの要素が含まれます。もし、選択範囲内のすべてをタブで操作できるようにしたら、カーソルはほとんど動かなくなってしまうでしょう。ブレークポイントは特に密度が高いので、状況に応じて意図的にタブ操作し、直感的に作業が行えるよう、状況に応じて操作するためのロジックを追加しました。また、ブレークポイントの間をダブルクリックして、範囲を選択できることも可能となりました。

ルーラーをオプションで編集グループに含む

編集グループにルーラーを含めることができるようになりました。これにより、アレンジの変更やリコンフォームの際に、マーカーやテンポの変更などをより簡単に反映させる行うことができるようになります。この変更に伴い、グループの<すべて>にルーラーを含めるケースに対応するため、‟グループを変更ウィンドウ” のIDメニューからグループの<すべて>へアクセス可能となりました。

Pro Tools Modify Groups

ツールバー上のクオンタイズ・コントロールの改善

編集ウィンドウとMIDIエディタのツールバーにあるクオンタイズ・コントロールは、クオンタイズ・ワークフローへのアクセスを改善するために Pro Tools 2022.9 で導入されました。その後寄せられたユーザーからのフィードバックに基づき、以下の改善を加えました。

  • 2つの主要なパラメータは、パラメータ名をクリックすることで、ツールバーから直接オン/オフを切り替えることができ、イベント操作ウィンドウを使用する必要がありません!
    • 2つの主要なパラメータは、ノート・グリッドでは強さとスウィング、グルーブではタイミングとベロシティです
  • イベント操作ウィンドウのクオンタイズ・ページで、「連符」や「ランダマイズ」などの高度なパラメータが有効になっている場合、「オプション」ボタン(歯車アイコン)の右上にオレンジ色の丸が表示されます
    • このボタンで、引き続きイベント操作ウィンドウの開閉が行えます
    • イベント操作ウィンドウが開いている場合、ボタンが青く点灯します
    • ヒント:MacではOption+0、WindowsではAlt+0を使用すると、イベント操作ウィンドウのクオンタイズ・ページにさらに速くアクセスできます

Quantize controls in Pro Tools Edit Window toolbar

ヒントとトリック:

  • クオンタイズ・コントロールは、イベント操作ウィンドウのクオンタイズ設定をそのまま反映したものであることにご注意ください
  • 特定の音価やグルーブの代わりに、「小節|拍グリッドに従う」を選択すると、タイムラインのグリッド設定をクオンタイズのグリッド値として使用することができます
    • タイムラインのグリッド線は、ノートがクオンタイズされたときにスナップする場所を示します
    • Shift+ -/+ のショートカットでタイムラインのグリッド値を大きく、または小さくすることで、ワークフローをさらに効率化できます
  • さらに速く操作するには、ショートカット(MacではCommand+Option+0、WindowsではCtrl+Alt+0)を使ってクオンタイズします
  • Pro Toolsでは、オーディオのクオンタイズも可能です!個々のオーディオ・クリップをグリッドにスナップするか、エラスティック・オーディオを使用してクリップ内のコンテンツをクオンタイズできます

 

Pro Tools Event Operations Window

 

Pro Tools | Sync X ビデオ・ジェネレータが10MHZクロックに対応します

Pro Tools|Sync Xは、入力される10MHzクロック信号に対して相対的なビデオ・リファレンス信号を生成できるようになりました。スタンドアロン・モードとPro Toolsとの併用時に対応します。ファームウェアのアップデートが必要です。詳しくは、Sync Xサポートと互換性をご覧ください。

 

利用条件

Pro Tools 2023.3は、有効なサブスクリプション、またはソフトウェア・アップデート+サポート・プランに加入している永続版ライセンスをお持ちのすべてのPro Toolsユーザーと、すべてのPro Tools Introユーザーに提供されます。Pro Tools Introユーザーは、Sonic Dropコンテンツと新しいPlayCellインストゥルメントにアクセスできないのでご注意ください。Avid Link、もしくはAvidアカウントからアップデートできます。Pro Toolsのソフトウェア・アップデート+サポート・プランを更新する必要がある場合、または最新バージョンに更新したい場合は、こちらをご覧ください。また、Pro Toolsを初めてお使いになる方は、30日間の無料トライアルで最新バージョンをお試しください。 

このリリースの詳細については、Avidアカウントでご利用いただける新しいドキュメントをご覧ください。

ARAおよびMelodyneは、Celemony Software GmbHの登録商標です。

Chris Winsor
Chris Winsor
Chris Winsor is a senior principal product designer for Pro Tools who has spent the last 14 years testing and designing solutions, including improvements in I/O Setup, field recorder, the video engine, and Dolby Atmos workflows.